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宇和島パールカップレース 帰りの回航 [ヨット]

出港は、潮の流れに合わせて、真夜中の予定でした。
  早く出ても逆潮の時は、どうせ進まなくて効率が悪いとのことでした。

  予定よりは少し早めの11時半ごろ出発しました。


   「もう一度、夜の日本丸見て帰りましょうか?」
   
         黙っていても、やりたいと思っていた事を
                        誰かが言い出します。  

IMG_0932.JPG

    朝は混み合っていた海も、今は他に近寄る船もなく
                        静かな中での鑑賞でした。
             
      
     じゃあそろそろ帰りましょうか。

  
    日本丸に別れをつげて、まだその余韻の中にいる内の事です。


        ガン といきなり大きな衝撃があってエンジンが止まりました。
      

    
   大きな岩にでもぶつかったのだろうか、と思うような衝撃でした。

     
   初めは、エンジンをかけてもヨットは動きませんでした。

    他のクルーはいろいろ相談しながら、
      ヨットをバックさせたり前進させたりしました。        


     「なんだあ、こりゃあ」と
    引き上げたものは、すごく太いロープだったのです。

    「何でこんなものがこんな所にあるんだろう。」
      
     
         



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     朝、明るくなってから撮ったロープです。

                  
      
     エンジンは動きはじめましたが、
      3ノットを過ぎると、船体が震えはじめるのです。


     それがどういう状況の為にそうなるのか分かりません。
      暗い夜の事で、調べることもままなりません。

     
       
      一応ゆっくり進み始めたものの、
         何がどんなふうにダメージ受けているのか分からず、
           この状態で、どこまで持つのかも判断がつきません。


        「沖に出てしまってから、止まったら、それ、もっと悪いですよねえ。」

         そんな意見も出るので、
              ではどうすれば良いのだろう、、、と
           ひとりで、いろんな可能性を想像していました。
         

         
              そんな時 ピーターストームのオーナーから
               大師匠の携帯に電話がかかりました。

         私たちの後を追って出たので、どこにいるかを尋ねるためです。

        
        大師匠が事情を話して、潮の流れが変わるところまでだけでも
         引っ張って帰ってくれないかと頼んでいました。

             ピーターはすぐに受け入れてくれました。

        後から追って来ると思っていたピーターは
             帆船見物のあいだに、先に行っていたようで、
                 待っていてくれました。
         
               横にならんで、ロープを投げて渡し、
        それぞれに結わえて、ピーターが先導するのに合わせて、
                 こちらでも舵を切りながら進みはじめました。


                5ノットの早さでした。  
        
             いつ見ても、前にひっぱってくれるヨットの姿があるのは、
                 心強く安心でした。。
  
           私たちの為に帰りが遅くなったピーターには
                       申し訳ない気持ちがしましたけれど、
                連れ立って楽しい事をしているようにさえ思えました。
      
          
          



 夜半に眠くなって船室に下りて、寝ようとした場所は
                 大きなエンジン音がして、
             いくらどこでも眠れるといっても、さすがに無理かな
                と、すぐに目が覚めては思うので、
       
            もうこんなに何度も目が覚めるくらいなら、
                  誰かと交代しようと思い、ごそごそ起き出していたら、
               
            技術士官が上から顔をのぞけて、小さな声で名前を呼んでから、

            「起きるんだったら、しっかり着てきた方がいいですよ。
                 外、寒いですからねぇ。」
            と、まるで母親が小さい子にでも言うような優しい調子の声で
                    気遣ってくれました。
              
               技術士官は息子とあまり歳が違いません。


            


 外へ出て、時間を聞いてびっくりしました。
               寝てないと思っていましたが、
                  一息に眠ってしまっていたのです。

          IMG_0943.JPG
          引っ張ってくれているピーターストーム


 
              

   

       

                        
      IMG_0945_R.JPG

   これから明けてゆく時間は、
       日頃味わえない美しさを堪能できます。




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   佐田岬




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    このあたりは潮の流れがぶつかるところで、
      波が嘘のように穏やかになったこの日も、
              ここだけは波立っていました。





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     明るくなったら、ピーターでは、
   セイルを揚げる準備がはじまりました。
    

       この日は風にはあまり期待ができませんでしたが、
       多少でも早くなるのかなと思い、

    「うちでもあげますか?」

    と聞いたら、

    「いえいえ、引っ張られる船が帆をあげたら 振られて
         抵抗になったりするんで、揚げない方がいいんです。」
       
   と船長が教えてくれました。

    
      
         



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    ジブの上がったピーターストームの後姿、      
   
       きれいですね。





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  お腹がすいたなあ、、
  
  結局買い物してませんね。

   
  ずっと前にカップラーメンを買って置いておいたのがある
           と甲板長が思い出しました。

   「だけど、賞味期限だいじょうぶかなあ。ちょっと見てください。」

   「大丈夫、大丈夫、 賞味期限は食べた後から
         調べたらいいですよ。」




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大師匠が中から、いろいろな種類のカップ麺を出して並べました。
       
    「いろいろあるけど、何かいいですか 」

なんだか、遊園地のアイスクリームスタンドのような雰囲気です。




IMG_1039_R.JPG

  凪いで、とろけそうな海面
          
       たどり着くにはまだまだだけど、
      こんな中で、波に任せて、いつまででも浮かんでいられそうな気がして来ます。


   ピーターは結局、それぞれのマリーナへの分岐まで、
                      引っ張り続けてくれました。
           

      綱を解くと、2ノットの差がはっきりわかりました。

      もしずっとこんな調子で帰っていたら、
        遅いだけでなく、不安がつきまとった事でしょう。

     

    

       ピーターの後姿はすぐに小さくなり、
          ちょっと他を見ているうちに
                    島影に隠れていました。

            
   




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     ただいま!  
        

         

    ジブトラックは飛び、ジブセイルは破れ、ハルは傷つき、
       エンジンの調子がおかしくなり、、、
    
       傷だらけの帰還となりましたが、
              最後の最後まで
                  遊び心は失せませんでした。
           

       


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     マリーナには午後2時半ごろつきました。15時間の回航でした。    


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コック長

こやってブログに記録を書いていただけるとそれを見るとわあくわくを思い出してこれまた楽しみが増えちゃいますね
広報官なしで参加になる南風杯が近づいてきましたが今回は技術士官に写真を頼みますので楽しみにしていてください

by コック長 (2012-05-17 05:07) 

シジュウカラ

再会の喜び、失敗やら危機との遭遇があればこそ現れた心の通い合い、、、、今年の宇和島冒険物語もここまで、ですか?

とても名残惜しい気がしているのですが、でも来年のレースを楽しみにして待つ事にします。


by シジュウカラ (2012-05-17 05:55) 

reiko

コック長へ  レースに役に立たない私を快く乗せてくださって、役をあたえてくださって、毎回素晴らしい経験が出来て、人生が益々豊かになっています。ありがとうございます。
南風杯、又しっかりがんばって、楽しんできてください。
ブルーノートに何もない事はないでしょうから、直撃インタビュー?します。お土産話たのしみにしています。


by reiko (2012-05-17 09:04) 

reiko

宇和島だけが2回目です。出かける前は、知っているところに出かけるし又書く事できるのかなあとぼんやり思っていました。
ところが、たくさんの事切り捨てないと、報告すら書けないなあというくらい冒険に満ちた旅でした。ずっと読んでくださってありがとうございました。
by reiko (2012-05-17 09:10) 

赤いウインドブレーカーの男

夜の海に、エンジン不調の状態で乗り出す。
すごいですね。

15時間の航海。
これも、常人の想像を超えています。
すごいです。


by 赤いウインドブレーカーの男 (2012-05-17 10:05) 

reiko

もしピーターストームに助けてもらわなかったら、どういう事になったのでしょうね。でもあの時は、どうしようかと言いながら、着くまでの時間や、ガソリンが足りるか計算したり、浸水がないかも調べて前進していました。 私は任せて乗っているだけでしたが、判断を下す人には、思案のしどころだったのでしょうね。

赤いウインドブレーカーの男さんへ
by reiko (2012-05-17 14:48) 

kyonkyon

reikoさんの心に映っている世界は、どんな状況でも絵本のように心躍る物語です。書いてくださってありがとう。
by kyonkyon (2012-05-17 18:06) 

ちはやママ

拝見してびっくり。最後の最後までドラマでしたね。
ヨットは直ったのでしょうか。
とにかくお疲れ様でした。
私どもは最後は本当にのーんびり帰っていたのですが、数時間前にそんなことが起きていようとは……。
あのロープは一体何だったのだろうと夫と話しています。

武蔵へは夫は行きたいと考えてるようですが、
私も別の用事と重なってしまいました。残念です。
by ちはやママ (2012-05-17 21:17) 

reiko

kyonkyonさん そんな風に読んでくださってありがとうございます。後で考えましたが、今回はやはり荒天気味だったことがいろいろなドラマを作ったと思います。でもその分おっしゃるように大変な思いと共に心躍る思いをしました。
by reiko (2012-05-17 22:08) 

reiko

ちはやママさん タンカーの船長も、あんな太いロープがあのあたりに浮遊しているなんて考えられないと言っていました。流用したものをうっかり落としたとか、、、何がおきたのでしょうね。

事が起きて皆が真っ先に心配したのは「武蔵にゆけるか」、、それまでに修理可能な故障かということでした。
結局、シャフトが曲がっていたのです。他の修理も間にあって、みんなの気持ちはもう武蔵へ向かっています。

敗れたジブセイルの新調はコック長の大蔵大臣のオーケーが取れて、皆でおかしいくらい盛り上がっていましたが、今回の武蔵には間にあわないから、ガムテープで補修して出る予定のようです。(笑) 私も武蔵に行けないのは残念です。



by reiko (2012-05-17 22:33) 

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